映画「アオギリにたくして」
広島平和記念公園に被爆樹木アオギリが植えられている。その下で、多くの子どもたちに、被爆体験を語り、戦争と原爆への怒り平和の大切さを訴えた故沼田鈴子さん。彼女をモデルにした映画。そのアオギリの2世が海老名市役所の南玄関横に植えられている。2009年、「平和市長会議加盟」記念として広島市から送られたものである。
勤めていた逓信省で沼田さんは被爆した。命は取り留めるものの、左足を失い、婚約者の戦死で自暴自棄に陥った。家族の励ましで、義足を使い職場復帰をした。職場の同僚からのプロポーズは、彼の母親「孫に放射能の影響が出るかもしれんから許せない。」で破棄となった。復興していく広島のまちのなかで、被爆者や障がい者への差別や偏見に遭い、自殺寸前までいく。その沼田さんを救ったのは、逓信省の庭のアオギリだった。原爆で焼け焦げになりながらも枝に小さな芽を出すアオギリの木を見て生きようと決意する。かって、入院中に傷の癒えていない脚の切断面をフィルム映像に納めた。その原爆記録映画『人間をかえせ』を見たことで、「生かされた者」として、被爆体験を後世の人々に伝える使命に目覚め、原爆の恐ろしさと愚かさを世界中に伝えることを決意した。チェルノブイリ原発事故では、原子力の平和利用はありえないことから反原発を掲げ、福島原発事故による放射能の影響を心配し続け、4か月後に永眠された。
復興していく広島のまちのなかで、被爆者や障がい者への差別や偏見。被爆地で被爆者が差別され、過去の嫌なことには目をつむり、なかったことにしてしまうという不条理な社会を生み出した。それは、現代にも通じているのではないか?福島第1原発の事故の検証もされぬまま、川内原発・伊方原発 は再稼働されている。日本が戦争に突き進まなければ、そして原爆がおとされなければ、彼女は数奇な人生を歩むことはなかった。平和と核について考えさせられた。広島・長崎、福島第1原発事故を経験した日本が、核の傘のもとにあることを認識し、きちんと歴史と向き合い、2度と過ちを繰り返さないために、この映画の普及を考えていきたい。