里親センター「ひこばえ」を訪問

子どもの貧困や児童虐待の増加など、子どもが育つ環境は年々厳しい状況です。1人の人間として成長していくには、どのような環境が望ましいのでしょうか?神奈川ネット県央ブロックの学習会として、2015年6月に海老名市内に開所した里親センター「ひこばえ」を訪問し、担当責任者で里親ソーシャルワーカーの矢内陽子氏からお話しを伺いました。

2011年、国は社会的養護が必要な子どもの9割は乳児院や児童養護施設などの施設で、1割が里親家庭で養育されている現状から、15年後には里親家庭での養育が3割になるような「里親ガイドライン」をだしました。県はその対策として里親センターを立ち上げ、社会福祉法人「唐池学園」に委託し、里親制度の普及啓発・里親支援・委託推進の事業を行っています。

心身ともに健やかに子どもが成長するには、安定した人間関係の中で養育されることが大切です。施設では職員が複数の子どもを担当し、担当職員が変わることもあります。里親家庭では、家庭内の役割や地域とのつながりの中で養育されます。深い愛情と理解を持った家庭環境で子供が育つことは、将来自分の家庭を持つ時のモデル(イメージ)となるということでした。

そのためには里親希望者の発掘・支援が大切で、市の職員・保健師・民生委員や学生など対象者に合わせた「里親セミナー」を開催しています。里親支援として、地域を超えたつながりを持てるよう、共通の悩みの解決に向けて、離乳食の作り方や小学校入学時の心得・真実告知・実親とのつながりなど、実践的講座を開催しています。

子どもを産み育てる過程のどの時点でも、養育が困難になったとき、里親という選択肢があることを広く知らせるべきだと感じました。より良い環境で育つことは子どもの権利であり、提供していくことは社会の責任です。

「里親に預けると、子どもをとられてしまうのではないか」と里子にだすことをためらう実親が多いとのことです。現在では、年末年始・夏休みなどに親元に帰れない施設で暮らす子どもに家庭生活体験をさせる「3日里親」制度、虐待を受けた子、障がいを持った子に対応する「専門里親」制度があります。施設と里親を活用して、その子にあった養育環境を提供していくことが必要です。様々な年代・地域の方が里親になることで、可能になります。市町村と連携した里親制度の啓発・普及がこれからの課題と思われます。